眼の病気も様々で、手術が必要なものから体の他の部分に原因があるものまで色々あります。
なんだか目がかゆい、ゴロゴロする、物がかすんで見える、まぶしい、物が二重三重に見えるといったサインを見逃さないよう目の病気についてちょっと勉強してみましょう。
1.白内障
白内障はカメラのレンズに相当する水晶体が混濁する病気で、加齢が原因であることが大半です。従って老化を促進するような因子(例えば動脈硬化、喫煙、ビタミン不足、紫外線など)が白内障を進行させます。白内障になると水晶体のクリスタリンというタンパクが変性し光の通りが悪くなり、一方で光は散乱します。
その結果コントラスト感度に特に影響が現れ、暗くなると見えが悪くなり、逆に明るいところではまぶしくなります。
白内障の進行を抑制する薬物も試みられていますが、今のところ決定的な治療とはなっていません。現在用いられている白内障の治療は、混濁した水晶体の中身を超音波で粉砕吸引し、残されたカプセルの中に人工水晶体を入れる手術です。
3mmほどの切開からすべての処置が可能で、それほどの疼痛はなく、多くは外来手術が可能です。
2.緑内障
眼圧により視神経に障害を来し、視野が欠けていく病気。必ずしも眼圧が高いとは限らず、実際には6割が正常眼圧です。40才以上の17人に1人は緑内障に罹患していると言われています。
緑内障の危険因子としては近視、たばこ、動脈硬化などが上げられますが、血管調整障害の関与も指摘されています。血管攣縮症候群では血管の自動調整が狂っていて局所的な血管攣縮を来し、眼循環に関しても同様に血管攣縮により障害を受けると考えられています。
最近は健康診断で眼底カメラ撮影が行われ、緑内障患者の早期発見につながっています。緑内障患者は徐々に進行する視神経障害により視野欠損を生じますが、視力は末期まで良好ですので、自覚症状に乏しく、気づいたときは手遅れということもあります。視野欠損があっても自覚することがほとんどない理由は、両眼視の場合片側の視野欠損が他眼で補われてしまうこと、また一つは大脳の補充機能により視野欠損が補われてしまうことに由来します。
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正常眼底 |
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緑内障眼底 |
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緑内障の視神経は中央の白い部分(乳頭陷凹)が大きい。
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このような所見が検診時に認められましたら、視野検査により神経障害の程度を判定します。
左から、緑内障初期、中期、後期。黒いところが見えてないところ。実際の景色は下の図のよう見えている筈ですが、脳は見えてない部分を補完する機能があり、患者は景色を見ても視野欠損に気づきません。
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初期 |
中期 |
後期 |
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緑内障の治療は薬物療法が中心となります。薬物療法が困難な場合は、レーザー隅角形成術を行うこともあります。これらの治療で神経障害の進行を防ぐことができない場合は、手術的治療を行うことになりますが、手術後に視機能が改善することは期待できません。
3.糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は日本人の中途失明の原因の第1位で、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」が糖尿病の3大合併症といわれています。糖尿病はほかにも、白内障や緑内障もひきおこします。
糖尿病網膜症は眼底出血の程度により、@単純網膜症(小さな出血、自覚症状なし)A増殖前網膜症(大きな出血がありレーザー光凝固が必要、自覚症状ほとんどなし)B殖網膜症(大出血を起こし手術が必要となることが多い、自覚症状あり)に分けられますが、眼底出血がかなりひどくならないと自覚症状がでてきません。自覚症状が出てくる前に発見するためにも、糖尿病といわれたら、眼科も受診するようにしましょう。
4.斜視
斜視はそのずれ方により内斜視、外斜視、上下斜視と分けることができます。
乳児に見られる先天性内斜視は弱視になる可能性が高くできるだけ早い治療が必要です。
これよりやや年長児で、ものを見るときに内斜視になるのは調節性内斜視の可能性が高く、多くは遠視で、適切な眼鏡矯正が必要です。
小児期で最も多い斜視は間欠性外斜視で、ボーとした時や疲労時などに外斜視が現れ普段は正常な眼位です。
この場合は急いで治療をする必要はなく、眼精疲労が強い場合か恒常性外斜視に移行した場合に手術を行えばよいと考えられます。横を向いたときに上下斜視が見られれば下斜筋過動症のことが多く、その程度により手術が必要となります。
突然生じた斜視は麻痺性斜視と考えられます。複視を伴い脳神経の麻痺である可能性が高く、MRIなどの頭部の精密検査が必要となることがあります。
疲労時に外斜視が見られ、眼瞼下垂を伴っていれば重症筋無力症の可能性があります。
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